シネコン「全席販売」再開で、劇場損益は改善するのか?

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こんにちは。けーたろです。
数年前まで、シネコンで支配人してました。

9月の4連休は、久しぶりに混雑しているシネコンが多かったですね。

このような中、政府によるイベントの入場制限が9月19日に緩和されたのを受け、
シネコン各社の対応に差が出ました。

全席販売・飲食制限(ドリンクのみ)
座席50%販売・飲食制限なし

 

どちらが、シネコン経営上得策なのでしょうか?

今回は、損益の観点から検証しみます。

 

先に結論です。

月間動員が10万人以上なら、ドリンクのみの「全席販売」もあり。

1.シネコン各社の対応

(9/19時点の対応)

全席販売・飲食制限(ドリンクのみ)

T・ジョイシネマサンシャイン など

 

「50%販売」継続・飲食制限なし

TOHOシネマズイオンシネマ など

2.それぞれの、メリット・デメリット

全席販売・飲食制限(ドリンクのみ)

【メリット】

  • 興行収入(動員)の増加
  • 飲食運営の簡素化できる(だれでも対応が可能)
  • フロア清掃の簡素化(消毒などに手間をかけられる) など

【デメリット】

  • 混雑(コロナ感染について不安を感じる)
  • 鑑賞中の飲食制限による、顧客満足度の低下
  • 飲食販売制限による、飲食売上の低下 など

 

座席50%販売・飲食制限なし

【メリット】

  • 混雑緩和による、顧客満足度の向上
  • 飲食売上を最大化できる など

【デメリット】

  • 興行収入(動員)の機会ロス
  • 動員ロスに伴う、飲食・物販売上の機会ロス

3.損益シュミレーション

「全席販売・飲食制限(ドリンクのみ)」「座席50%販売・飲食制限なし」では、

どちらが得なのか?

次のような劇場を想定して、損益をシュミレーションしてみます。

1)シュミレーションの条件

[想定劇場]

  • スクリーン数:9スクリーン
  • 総座席数:1,600席
  • 各スクリーンの平均上映回数:4.5回
  • 1日の総キャパ数:7,200席(座席50%販売時:3,600席)

 

[想定単価・原価率]

  • 平均チケット単価(※1) :1,340円(原価率55%)
  • 飲食制限時の客単価(※2): 120円(原価率15%)
  • 飲食制限なし時の客単価  : 280円(原価率25%)

 

(※1)日本映画製作者連盟が発表した、2019年の数値
(※2)飲食制限はドリンクのみ販売のため、単価を低く設定

2)想定動員の算出条件

  • 全席販売時の月間想定動員を基に、座席50%販売時の動員を算出
  • 月間動員は「4週間(28日間)+土日2日間」の30日間で算出
  • 1週間に占める土日の動員比率は、土日合計で50%~60%と想定

3)損益シュミレーション

[評価方法]

「全席販売」及び「座席50%販売」について、それぞれの粗利を算出

 

[算出方法]

  1. 売上:興行収入と飲食売上を算出(動員×客単価)
  2. 原価:原価を算出(売上×原価率)
  3. 粗利:粗利を算出(売上-原価)

月間動員6万人の場合

[想定動員]

  • 各週の想定動員:13,000人ほど
  • 土日の動員:各日3,800人ほど

この規模の動員で全席販売を行うと、

土日で、各日300人ほどの上積みとなるが、平日は「座席50%販売」の上限動員に満たない。

「座席50%販売」をした劇場では、△2,200人ほど少なくなる

 

[想定粗利]

500万円弱ほどの差額で「座席50%販売・飲食制限なし」が上回る。
動員が6万人程度の場合、
「50%座席販売」に対しての興行収入の上積み分が少ない。
全席販売のメリットが少なく、飲食制限によるデメリットが大きい

月間動員10万人の場合

[想定動員]

  • 各週の想定動員:22,000人ほど
  • 土日の動員:各日6,400人ほど

この規模の動員で全席販売を行うと、

土日で、各日2,800人もの動員を上積みできる。

この規模の動員でも、平日は「座席50%販売」時の上限動員に満たない。

「座席50%販売」をした劇場では、△27,000人ほど少なくなる。

 

[想定粗利]

1,100万円ほどの差額で、「全席販売・飲食制限(ドリンクのみ)」が上回る。
動員が10万人程度の場合、
「50%座席販売」に対しての興行収入の上積み分が大きくなる。
全席販売のメリットが大きく、飲食制限によるデメリットをカバー。

4.まとめ

  • 動員が多くなるほど、「座席50%販売」に対しての興行収入の上積み分が大きくなる。
    その結果、全席販売のメリットが大きくなる。
  • 動員が少なくなるほど、「座席50%座席」に対しての興行収入の上積み分が少ない。
    その結果、全席販売のメリットが少なくなる。

 

・話題作公開などの繁忙時は、

 ドリンクのみの販売になっても「全席販売」あり。

 

・人気作のない閑散時は、「座席50%販売」のまま。

 

チケット代や飲食の客単価、曜日ごとの動員比率は劇場によって全く異なります。
興行収入・飲食売上以外にも、損益の変動要因は多いので、上記はあくまで“参考”です。

今後、シネコン各社は動員の取りこぼしを最小化するため、
動員の少ない作品を早々に終了させる動きが、今まで以上に加速するかもしれませんね。

みなさん、観たい作品は早めにどうぞ。

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