こんにちは。けーたろです。
元シネコン支配人です。
前回、ウィズコロナでの映画鑑賞について書きましたが、最近、職場の同僚からこんなことを言われました。
「シネコンの経営って、今後、やばいんじゃない?」
一口にシネコン(映画館)いっても色々です。
大企業が経営母体になっている大手シネコンと、経営基盤がぜい弱な小規模映画館(ミニシアター)では、状況が全く異なります。
そこで、国内の映画興行状況やシネコンの収益構造から、映画館の経営について検討してみました。
先に結論をいいますね。
- 大手シネコンは乗り越えられる。しかし、閉館の判断に迷っているような収益性の低い劇場は、これをきっかけに閉館させる可能性あり。
- 経営基盤のぜい弱なミニシアターは、危機的状況です。
1.国内映画会社の現状
コロナ禍における興行状況は、前回のブログで触れています。
興味があればご覧ください。
2.シネコンの収益構造
●シネコンの主な収入源
シネコンの主な収入源は、以下の5つです。
収入源について、簡単に説明します。
1)興行収入(ボックスオフィス)
映画のチケット代(興行収入)に対して、原価である映画料を配給会社に支払います。
映画料は、興行収入の55%~60%程度
日中の興行とレイトショーの興行の比率で変わりますし、事後調整(アジャスト)が入るので、原価率は、会社・作品ごとに変わります。
そもそも、興行収入(動員)がなければ、以降の飲食・物販等の売上は立ちません。
2)飲食の売上(コンセッション)
飲食の売上が、シネコンの経営状況を左右します。
ポップコーン、ドリンク等は、各劇場で原材料から作ることができるため、原価率は低くできます。
大手シネコンほど、スケールメリットで原価率は低くなり、
原価率は25%程度
3)物販の売上(グッズショップ)
パンフレット、各種グッズの売上です。
飲食と違い、製品での納品・販売になるので、原価は飲食に比べて高くなります。
原価率は70%程度
4)シネアド
シネアドとは、シネマ・アドバタイジングの略で、映画の上映前にスクリーンで表示される広告のことです。
この収入には、原価が掛からないため、劇場にとって“おいしい”収入となります。
5)その他(プロモーション収入、貸館収入等)
プロモーション収入とは、入場時にお客様に渡すサンプリング商品であったり、館内での宣伝に対する収入です。
また、貸館収入とは、劇場を映画興行以外のイベント(企業のプレゼンテーションなど)に貸し出すことによる収入です。
●シネコンの主な経費
シネコンの主な経費は、以下の5つです。
経費の内訳について、簡単に説明します。
1)家賃
各劇場の収益性、撤退などの判断は、家賃契約の内容しだい。
シネコンが入居する、商業施設の立地・集客力、また、ディベロッパーとの力関係などにより、
月額、数百万円~数千万円と、大幅に異なります。
2)商品原価(映画料、飲食・物販の原価)
主な収入源の項で言及しましたが、映画料や飲食・物販商品にかかる原価です。
3)水光熱費
経費としての比率は大きいですが、
2011年3月11日の震災以降、各社、省エネシステムの導入などを行い、かなり効率的な運営ができているかと思います。
具体的には、
- システム自動監視による、各スクリーン空調の空調制御
- 館内照明のLED化 等々
4)人件費
各劇場の運営努力で経費削減ができる、数少ない要素
現在のシネコンでは、各社、チケットカウンターの無人化、映写の無人化が進み、
無人化前と比べると、半分程度のアルバイトスタッフ数で回るようになりました。
アルバイトスタッフの在籍数が少ないということは、
表面的な人件費だけでなく、会社側が負担する社会保険料、採用コスト等が安く済みます。
毎週の動員予測に合わせてシフトラインを調整。各社ギリギリ以下とも思える人員で、ギリギリの運営を行っています。
5)その他(宣伝・広告費、減価償却費 等々)
各劇場は地元の媒体(ミニコミ誌、地方TV・ラジオ局など)と組んで映画の宣伝を行います。
また、大規模な装置産業であるシネコン業界は、オープン後、5年程度は減価償却の比率が高く、利益が出づらい収益構造となっています。
3.支援策
2020年4月6日、映画監督や俳優らが呼びかけて、#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトが発足し、政府に緊急支援を求める要望書の作成、賛同者の署名を募りました。
他にも小規模映画館のための「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」が立ち上げられると、目標金額1億円の3倍である3億3,102万余円の寄付が寄せられました。
4.まとめ
経済産業省による調査(2020年5月14日更新)によると、全世代で映画館での鑑賞数が少なくなっているそうです。
また、シニア世代は「映画館以外での映画鑑賞」が大幅に増加し、若者は「映画」離れが増えているというデータも示されています。
今回のコロナ禍により、一層の映画館離れが進むと思われます。
はじめに、大手シネコンは乗り越えられるだろうと書きましたが、映画興行界自体が大打撃を受けています。
収益性の低いシネコンは、大手であっても、今回のコロナ禍をきっかけとして、閉館という判断になる可能性があります。
特に、経営基盤のぜい弱なミニシアターは、明日もわからない状況です。
家の近くのシネコンではなく、たまには、ミニシアターを観賞場所に選ばれてはいかがでしょう。
大手のシネコンでは上映しない、掘り出しものの作品に出合えるかも。
今回は、この辺で失礼します。
では、また。
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